自毛植毛とくせ毛の関係
自毛植毛手術は薄くなってしまった部位に自分の髪の毛をしっかり生やすことができる唯一の治療法ですが、手術であるためいくつかの後遺症、合併症があります。
後遺症、合併症というと大げさなものに聞こえますが、自毛植毛手術は体表の皮膚だけの手術ですので、さほど重い症状のものはなく、急性期(一時的なもの)がほとんどです。
具体的には採取部、移植部の腫れ、かゆみ、突っ張り感、感覚の麻痺など軽いものばかりです。これらは基本的に自然治癒してしまうものばかりですが、違和感が気になる場合は痛み止めなどの頓用も有効です。
自毛植毛後にくせ毛になる理由
これら以外に自毛植毛後にみられる現象のひとつに、くせ毛があります。自毛植毛手術を受けた後は通常4ヶ月程度で発毛がみられますが、時として生えてくる移植毛がくせ毛になる場合があります。
くせ毛といっても極端な縮毛になることは少なく、多少ウエーブがかかる程度です。くせ毛になってしまった移植毛は、ヘアサイクルを繰り返しているうちにだんだんと治っていきます。
自毛植毛術とは主に後頭部など、男性ホルモンの影響を受けにくくAGAになりにくい部位の毛髪を皮膚組織ごと採取する外科手術です。手術で採取する元となるもののことをドナーと呼びますが、自毛植毛のドナーとは主に患者様ご自身の後頭部や側頭部に生えている毛髪とその周りの皮下組織です。
後頭部や側頭部から採ったドナーは生え際や前頭部に移植した後も、男性ホルモンの影響を受けず、薄毛になりにくい元の性質を持ち続けます。
この様に採取したものが元々の性質を受け継ぐ現象をドナー・ドミナントといいます。自毛植毛手術はドナー・ドミナントの法則をうまく利用した薄毛治療です。自毛植毛によって採取・移植されるドナーはAGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の影響を受けない後頭部または側頭部の毛髪ですから、移植した後も育毛剤・養毛剤などを使う必要は無く、基本的にAGAが進行することはありません。
つまり自毛植毛とは一回手術を受ければ、移植した髪に関してはメンテナンスの手間やランニングコストが一切かからない治療=根治的治療ということになります。
植毛後のくせ毛は一時的
自毛植毛手術で移植された毛髪が、移植元(ドナー)の性質をそのまま受け継ぐということは、薄毛にならない性質だけでなく、髪の太さやくせといった性質も受け継ぐということになります。
採取するドナー部の髪質がくせ毛の場合は、当然のことながら移植部から生えてくる髪の毛もくせ毛になります。
ただし自毛植毛の場合は元の髪質がくせ毛でない直毛であっても、移植後にくせ毛に変化してしまう場合もあります。
これは時間の経過とともに少しずつ直っていきますが、直るまでにはその髪の毛のサイクル1回分(6~7年)かそれ以上を要するとも言われています。
またドナーの毛髪が細くて弱々しい毛髪の場合、移植後、髪がまっすぐ生えずカールする傾向もあります。ただし自毛植毛手術は髪のボリューム感を増すための手術ですから、基本的に細く弱い毛髪をドナーとして用いることはありません。
自毛植毛後に生えてくる毛髪がくせ毛になるケースについて説明してきましたが、基本的には元々の毛髪が直毛だった人が自毛植毛手術後にくせ毛になる確率はさほど高くありません。くせ毛に変化してしまったとしても施術後の時間経過とともに元に戻ることがほとんどです。
元々の毛髪がくせ毛の人は、髪質や毛穴の形(毛髪の断面の形)などが原因でくせ毛になっているので、根本的に治すことは難しいとされています。
どうしても気になる場合は、縮毛矯正やストレートパーマをかけるといった対策が必要です。
自毛植毛後のくせ毛の主な原因
自毛植毛後、移植部から生えてくる毛髪がくせ毛になる原因についてはハッキリ特定されていません。考えられる原因として以下のものが挙げられます。
毛根のダメージ
毛髪の中で、皮膚の外側に出ている部分を毛幹といい、内部に埋まっている部分を毛根といいます。自毛植毛手術においては毛根やその周りの組織を傷つけたり切断したりすることなく丁寧に採取することが求められますが、どんなに熟練した専門医であっても切断率を0%に抑えることは非常に困難です。
時として採取時に毛根や周囲の組織に傷がつきダメージを受けてしまい、その影響で生えてくる髪の毛がくせ毛になってしまうことがあります。
また、髪の表面を覆うバリアー層である毛小皮(キューティクル)にも採取時のダメージが影響を及ぼすことがあります。
施術技術
自毛植毛手術においては毛根採取時にいかに毛根と周囲の組織を壊さず採るかということが重要である点は既に述べましたが、植毛手術の方法や術者の技量によって採取のクオリティに差が出ることも否めません。
植毛手術を行う医師の技術水準が低かったり、使用する機材が古いものだったりすると、採取時に毛根の組織に傷をつけてしまう、または壊してしまうリスクが高まります。
また植毛手術は採取だけでなく、毛根組織を移植する際にも繊細な技術が必要です。移植する時に毛根を傷つけたり、適切な角度や深さで植えられていなかったりすると、術後の発毛効果に影響を及ぼすことがあります。
移植の際、頭皮に対して適切な角度で植えていなかったことで毛穴の歪みを誘発し、それがくせ毛の原因になることも考えられます。
毛穴の目詰まり
これはごくレアケースですが、自毛植毛手術後に毛穴が目詰まりすることで、くせ毛を誘発する可能性も考えられます。
人間の毛穴は外から異物で意図的に目詰まりさせるようなことがない限り、詰まって毛髪の成長に悪影響を及ぼすことはありません。頭皮から出る皮脂や汚れが毛穴に溜まっても、新陳代謝で自然と排出されますので特に問題はありません。
毛穴の詰まりが毛髪の成長を妨げるという話は非常によく聞きますが、医学的根拠のない俗説です(本来、髪の毛は毛穴の汚れを押し出す排泄の役割を果たすものです)。
ただし自毛植毛後は手術で付いた血液や体液の固まりが患部に付着しますので、普段よりもまめに洗髪を行うことをお勧めしております。
頭皮の血行不良
頭皮の血行が悪いと毛根に栄養が行き渡らず、毛髪の成長に悪影響を及ぼすという説は昔から語られてきましたが、これも医学的に根拠のない俗説です。
頭皮マッサージや血行を促進する育毛剤で毛髪が太く健康になったというエビデンスは、残念ながら今の所ありません。頭皮の血行とくせ毛の関連性も特に判っていません。
しかし髪の毛も人間の体の一部ですから、全身的な健康維持を心がけることで、毛髪の質も向上することは理論的に有り得ることです。
自毛植毛によるくせ毛のお悩み対処法
時間の経過を待つ
自毛植毛手術を受けて、生えてきた毛髪がくせ毛になってしまった場合はどうしたらよいでしょうか。これは術後の予測不能な現象としか言いようがなく、気にならないレベルであれば放って置くしかありません。くせ毛は時間の経過とともにだんだんと治っていきます。
もしどうしても気になる場合は、自毛植毛で生える髪は自分自身の自然な髪の毛ですから、縮毛矯正やストレートパーマで矯正することが可能です。
頭皮や毛根を手入れする
自毛植毛手術後のくせ毛を予防する手立ても、今の所はっきりしたものはありません。しかし植毛手術直後の不用な刺激が移植部のダメージになり、それがくせ毛につながる可能性はありますので、手術後少なくとも3~4日間は移植部を極力デリケートに扱い、ダメージを与えないようお気をつけ下さい。
親和クリニックでは自毛植毛手術翌日の無料洗髪サービスを行っております。専門のスタッフが手術翌日でも移植部にダメージを与えないよう優しくソフトな洗髪を行います。また翌日以降、患者様ご自身で洗髪を行って頂く際の方法や注意点なども丁寧にご説明しております。
術後の洗髪は移植部を清潔に保ち、感染症を予防するのに役立つだけでなく、かさぶたの形成防止にもなり、術後の違和感を目立ちにくくする効果もあります。
術後のくせ毛はある程度の予防、対処が可能ですが、どうしても心配な場合は担当医にご相談ください。
再施術して植毛本数を増やす
自毛植毛手術後のくせ毛を目立ちにくくするもう一つの策として、再手術して植毛本数・密度を増やすという方法も考えられます。
自毛植毛手術を行った同じ部位に再び移植を行うには、頭皮の回復や移植毛の成長がある程度完了するまで、最低でも半年~1年程度のスパンが必要となります。
親和クリニックの自毛植毛手術は一度の治療で十分な密度と自然な仕上がりを目指しますが、より良い仕上がりを目指すのであれば、追加手術も有効です。
手術を受ける際には担当のカウンセラー・医師が患者様と十分なコミュニケーションを取り、希望する最適なデザイン、最良の仕上がりを目指して綿密な打ち合わせを行います。
自毛植毛後に生えるくせ毛は元に戻ります
自毛植毛後のくせ毛は、ある程度起こりうる現象のひとつです。しかしその程度は気にならない程度か、気になったとしてもヘアスタイルや縮毛矯正等で対処できるレベルです。また時間の経過とともにくせ毛は徐々に解消されます。そこまで深刻に心配する必要はないでしょう。