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薄毛の悩みを解消する方法のひとつ「自毛植毛」は、自分自身の髪を移植することで薄毛が気になる部分に再び髪の毛を取り戻す手術です。薄毛の原因として最も多いAGAは前頭部や頭頂部に起こりやすいため、薄毛の起こりにくい側頭部や後頭部の健康な髪の毛を薄毛が気になる部分に移植します。
自分自身の髪の毛を植えるため、人工毛植毛と違って拒否反応が起こる割合も少ないとされる、今話題の植毛手術です。
そんな自毛植毛を検討する上で気になるのが、「ショックロス」という現象です。
今回は、植毛後に既存の髪の毛が抜けてしまうショックロスについて、詳しくご紹介いたします。
ショックロスとは
ショックロスとは、先ほどご説明したように自毛植毛手術後に植毛部分の毛が抜け落ちてしまうことです。手術から1~2ヶ月経過した頃に、自毛植毛を行った場所の周囲に生えていた既存の毛が抜け落ちていってしまいます。
毛が抜け始める時期や抜ける量には個人差があり、また必ずしもすべての人にショックロスが起こるわけではありません。ショックロスが起こって髪の毛が抜けてしまった場合でも、ほとんどの場合で1年ほど経過すれば元の量に戻るとされています。 毛が抜けることによって不安に感じる患者さまもいらっしゃると思いますが、それは一時的なものであり、毛髪の成長サイクルが進めばまた発毛が始まりますのでご安心ください。
実は原因は不明?!
実は、ショックロスが起こる医学的な原因は未だはっきりとわかっておらず、具体的な予防・対策方法は存在しません。現在は、手術時に使用する局所麻酔やメスによる頭皮・毛根へのダメージが影響し、髪の毛の生え変わりサイクルに乱れが生じてしまうのではないかと考えられています。
5人に1人程度の割合で起こるショックロスは、特に女性に起こりやすいとも言われており、また、自毛植毛を複数回に渡って行った場合はその時々で抜け毛の量や時期が変わることもあるなど、ショックロスが起こるか否かは実際に自毛植毛を行ってみるまでわかりません。
少しでもショックロスの確率を下げるためには?
先ほどご説明したように、ショックロスが起こる原因は医学的にはっきりと解明されていないため、ショックロスを予防する方法などは今のところありません。
ただし、ショックロスによって抜け毛が起こる範囲は、自毛植毛を行う部分とその周囲の局所麻酔を行う部分、そして移植元となるドナー部分です。
ショックロスの確率や範囲を少しでも下げたいのなら、「薄毛が気になるものの、まだ髪の毛が残っている」といった、既存の毛根にダメージを与えてしまう部分への自毛植毛は避けた方が良いでしょう。
また、既存の毛根に与えるダメージの具合は、治療を行うドクターの腕にも左右されます。
ショックロスが起こる確率を少しでも下げるためには、植毛治療を受けるクリニックをしっかりと選ぶことも重要です。これまでに手掛けた症例数や使用している器具などをチェックし、ドクターの技術力を見極めましょう。
自毛植毛は一度毛が抜ける
やはり自毛植毛を受けた後は「早く髪が生えてこないかな?」と期待して当然かと思います。その期待が大きい分、術後に髪が抜けてしまうと落ち込むこともあるでしょう。その気落ちしてしまう程度を少しでも軽減して健康な精神を保つために、以下のポイントを抑えておくことが大切です。
ショックロスは珍しくない
先ほども触れましたが、ショックロスは必ずしも起きるわけではありません。割合として、5人に1人程度であるとされており、稀な現象ではなく、自毛植毛をした人はある程度の人数がショックロスを経験しています。もしショックロスが起きてしまっても、悲観的にならず「時間が経てば、またしっかり生えてくる」とあわてない心がまえで待ちましょう。
ショックロスになっても隠せる
ショックロスが起きると、植毛した部分の周囲の髪が薄くなりますが、それを隠す手段はいくつかあります。
一時的なケアとして特に有効なのが、ケラチンパウダー(人工毛のふりかけ)です。とはいっても、やはり気になるのが移植した髪や頭皮への影響かと思います。しかしどうかご安心ください。医学的に見ても、ケラチンパウダーが移植毛や頭皮に直接悪影響を与える恐れはありません。このケラチンパウダーは、その1つひとつが毛穴より大きいため、毛穴詰まりを起こすことはありません。ただし1点気をつけたいのは、もともとの肌質が敏感であった場合などに、頭皮がかぶれる可能性は存在することです。過去に頭皮がかぶれた経験があるようであれば、刺激の少ないタイプもありますのでそちらを選びましょう。
他にも、隠す方法としての代表格、かつらや帽子を着用される方も多くいらっしゃいます。また、もともとのヘアースタイルが長めの方であれば、残っている周囲の髪でカモフラージュすることも十分可能です。もしショックロスが起こってしまっても、隠す手段はいくつかあることを覚えておきましょう。
ショックロスと脱落の違い
ショックロスと混同されやすい自毛植毛後の現象に、「脱落」というものがあります。この脱落とはどのようなものなのか。しっかり整理しておきましょう。
ショックロスで落ち込まないための心構え
自毛植毛を行うと、髪の毛を植えつけられた毛根がヘアサイクルを整えようとします。このため、自毛植毛をした後に一度植えつけた髪の毛は全て抜け落ちます。目安としては、概ね自毛植毛から1ヶ月程度で髪の毛は一度抜け落ちます。これは身体が起こす自然現象ですので、髪の毛が抜け落ちても全く問題はありません。
脱落とは?
ショックロスは、自毛植毛の手術後に髪が抜ける現象の一種ですが、脱落も同様です。そのため、ショックロスなのに、「髪が脱落した」と勘違いされる方もいらっしゃいます。脱落とは、移植した髪がきちんと生着せずに抜け落ちてしまうことを指します。
自毛植毛の生着率(髪が無駄にならず、しっかり根付く確率)は、手術法や施術を行う医師によって前後しますが、90~95%ともいわれており、非常に高い確率といって良いでしょう。脱落とショックロスで異なるのが、症状が起こる範囲です。脱落は移植した髪そのものが抜け落ちますが、ショックロスはその周囲の既存の髪です。
また、脱落は抜け落ちた後に髪が再び生えることはありませんが、ショックロスはあくまで【一時的な】抜け毛ですので、抜けてしまっても時間が経過すればきちんと新しい髪が生えてきます。脱落は起こる確率がかなり低いこと。そしてショックロスは一時的な抜け毛であることを理解しておけば、術後の不安もかなり軽減されるのではないでしょうか。
脱落を防ぐポイント
脱落は起こる可能性が低いとご説明しましたが、抜けた後に髪が生えてこなくなってしまうことを考えると、少しでもその確率を下げたいと思いますよね。ここでは、その脱落を少しでも減らすためにできる3つのポイントをご紹介します。
まず1つ目のポイントは、頭皮環境を清潔に保つことです。頭皮環境が悪化してしまうと、せっかく自毛植毛した髪も生着しにくくなってしまいます。やせた土壌に、作物が育たないのと同様のイメージです。頭皮環境が悪い状態というのは、皮脂や汚れ(ホコリや花粉など)で毛穴が詰まっていたり、頭皮に雑菌が繁殖してしまった状態などが挙げられます。対策としては、頭皮への刺激が強すぎない(洗浄力が強すぎない)シャンプーを使い、指の腹でやさしく洗うことが有効です。
次に2つ目のポイントが、頭皮のマッサージを行うことです。頭皮をマッサージすると、血行が促進され、髪を育てるのに必要な栄養素が毛根に行き渡りやすくなります。たまに行うのではなく、習慣的に行うようにすると元気な髪の育成に効果を発揮します。
そして最後に3つ目のポイントが、必要以上に患部に触れないことです。これは2点目と矛盾しているのでは?と考える方もいらっしゃると思いますが、半分正解で半分はずれです。大切なのは、「術後しばらくは」患部に必要以上に触れないということです。自毛植毛は外科手術である以上、術後の頭皮はダメージを負った状態といえます。特に移植部分は、移植した髪が頭皮に生着しようとしているため、術後しばらくは患部に強い力をかけることは厳禁です。刺激が髪の生着を妨げてしまい、移植毛の脱落を招いてしまいます。術後しばらく、具体的には、患部のかさぶたが自然にとれるまでは決して強い刺激を与えないように注意を払いましょう。
不安であれば、自毛植毛を受けたクリニックで経過を観察してもらい、医師の判断を仰ぐことがおすすめです。
既存の毛根を衰えさせないことも大切!
自毛植毛は、AGAによって薄毛が進行してしまった部分に、AGAの影響を受けづらい部分の髪の毛を移植することで薄毛を改善する方法です。
そのため、移植された髪の毛はAGAの影響を受けることがありませんが、元々生えている既存の髪はいつAGAの影響で抜け落ちてしまうかわかりません。
AGAの影響によって細くなってしまった髪は、健康な髪の毛に比べてショックロスの影響を受けやすく、二度と生えてこなくなってしまう可能性も高いとされています。
せっかく自毛植毛手術を行っても、既存の髪が抜け落ちてしまえば再び薄毛が気になる状態に後戻りしてしまいますよね。
そのため、ショックロスの影響を軽減するためには、“ミノキシジル”や“フィナステリド”を使ったAGAの治療を継続することも大切です。
ショックロスが起きても、髪は再び生えてくる
いかがでしたか?
「一度治療を行えば永続的に髪の毛が生え続ける」
「ウィッグの手入れが必要ない」
「治療後の拒否反応が起こらない」
など、メリットばかりのように感じる自毛植毛。
しかし、自毛植毛手術を行う前に、「治療後に髪の毛が抜け落ちてしまう“ショックロス”という現象が起こる可能性も高い」というリスクをしっかりと把握しておかなくてはなりません。
万が一治療後にショックロスが起こった場合、不安を感じることでさらに抜け毛が進行してしまうことも考えられます。ショックロスが起こるリスクと同時に「ショックロスが起こるのは一時的なことである」という知識も身に着け、自毛植毛後の不安な時期を乗り越えましょう。
監修医師
親和クリニック大阪院院長
滝田 賢一 KENICHI TAKITA
監修医師
親和クリニック大阪院院長
滝田 賢一 KENICHI TAKITA
音田総院長の医局時代の同門であり、薄毛治療専門医となってからは4年で1,500件以上の自毛植毛手術を経験。
術後生え揃う頃に患者さまよりいただく「満足しています」「自毛植毛をやってよかった」の声をやりがいに、患者さまのご希望に合う適切なアドバイスやサポートを心がけた診察、施術を行っている。